社会保険料(厚生年金料や健康保険料など)は「標準報酬月額」によって決まります。
そして標準報酬月額は、4月・5月・6月の給与の平均で決まります。
つまり、4月~6月の給料が多い程、支払わなければならない社会保険料が増えるということです。
「4~6月は残業しない方がよい。残業代を減らして節税すべし」というのは良く聞く話ですね。
なお、標準報酬月額は手取か額面の数字のどちらなのかというと、額面になります。税金等が引かれる前の、総支給額をもとに決まるということです。交通費も含まれるので注意しましょう。
標準報酬月額と等級
正確には、標準報酬月額の金額ごとに「等級」が設定され、その等級によって社会保険料が決まります。同じ等級の範囲内であれば、給料を下げても社会保険料は下がりません。
標準報酬月額と等級の一覧表はこちらのサイトで確認出来ます。※都道府県によって違います。
▶標準報酬月額表
確定拠出年金で標準報酬月額を下げる
標準報酬月額を下げるには、残業を減らす以外に、「確定拠出年金を使う」という方法があります。
僕はこれを利用しています。
僕が企業型確定拠出年金(401K)に加入しているのは過去にもお伝えしていますし、毎月の資産報告でも運用益を記載しています。
重要なポイントは、企業型確定拠出年金の掛金は、標準報酬月額に計算されないということです。
節税効果のシミュレーション


上記の表を元に考えると月給が30万円の場合、確定拠出年金の掛金を1万円に設定(=標準報酬月額29万円)した場合は等級が下がりませんが、2万円に設定(=標準報酬月額28万円)すると1等級下がり、3万1千円に設定(=標準報酬月額26万9千円)したなら2等級下がることになります。
30万円から2等級下げた場合、年間の健康保険料(介護保険を含めない場合)と厚生年金料は以下のように変わります。
標準報酬月額 | 健康保険料 | 厚生年金料 | 合計 |
---|---|---|---|
30万円 | 177,660円 | 329,400円 | 507,060円 |
27万9千円 | 153,972円 | 285,480円 | 439,452円 |
節税金額は、健康保険料 23,688円、厚生年金料 43,920円 、合計 67,608円 となります。
年間で7万円近く税金が変わって来るのです。
というか、社会保険料ってこんなに高かったのですね。給与明細では月額費用しか見ていなかったので、年間でこれほどの金額になるとは気付いていませんでした。
僕の確定拠出年金4~6月の掛金
僕の場合、確定拠出年金の掛金を4月~6月は限度額いっぱいの5万4千円に設定しています。(企業型確定拠出年金の掛金の上限は月額5万5千円だと思うのですが、僕の会社では5万4千円が上限なんですよね。このあたり、よくわかっていません。)
細かい等級の計算をするのも面倒ですし、残業時間は完全にはコントロール出来ないので総支給額が読めないということもあり、とりあえず限界まで給与を減らしておこうという考えです。
その分、4・5・6月は振り込まれるお金が少なくなってしまいますが、そこは将来のためにぐっと我慢です。
ちなみに、4~6月以外は毎月1万円を掛金に設定しています。
社会保険料が下がることによるデメリットは?
確定拠出年金で社会保険料を節約する場合、そのデメリット(リスク)も頭に入れておく必要があります。
それは、社会保険料が減る分、社会保険から得られるお金も減ってしまうということ。
一番わかりやすいのが厚生年金ですね。
老齢厚生年金の報酬比例部分(年額)は、次のような計算式で概算額を確認することができます(賞与がない場合)。
標準報酬月額 ✕ 5.481 / 1000 ✕ 加入月数
企業型DCに加入した場合と、現金給与を受け取った場合で標準報酬月額は2万円異なりますので、選択制DCが導入され、①と②でどちらの方がいいか検討されている方が30歳だったとすると、60歳までの30年間では、
(30万円 ― 28万円) ✕ 5.481 / 1000 ✕ 12ヶ月/年 ✕ 30年 = 39,463円(年額)
ほどの差が生まれることになります。年額ですので、それほど大きな差には感じられないかもしれませんが、仮に65歳から95歳まで公的年金を30年間受給するとしたら、総額118万円ほどの差になります。
https://ideco.kddi-am.com/learn/column/ideco0024/
上記の試算では、30歳から60歳までの間の標準報酬月額を2万円下げた場合、厚生年金の受給額が年間約4万円減るということになります。
確定拠出年金で節税する場合の損益分岐点は?

こちらの表で、標準報酬月額を30万円から28万円に下げた場合、厚生年金料は月額1,830円下がります。年額にすると21,960円。これを30年間続けると658,800円です。
厚生年金の節税効果は約66万円。その分厚生年金の額は年間約4万円減りますから、、
66÷4 =16.5
つまり、16年半以上年金を受け取る場合(=81.5歳以上生きる場合)は、確定拠出年金で節税しない方が良い計算になります。
※上記計算は、標準報酬月額を30万円と28万円で比較、年金の受給開始を65歳からとしている、など前提条件があります。実際は様々な条件によって変わりますので、その点ご了承下さい。
このあたりをどう考えるかは人それぞれだと思いますが、僕は、そもそも将来受け取れる年金はもっと下がっていくと考えているので、今節税しておく方が得だと判断しています。
また社会保険料は厚生年金だけではなく、健康保険から支給される出産手当金や傷病手当金、雇用保険からの失業給付金、育児給付金、介護休業給付金といった社会保険などにも影響がありますので、その点も頭に入れておく必要があります。
まとめ
企業型確定拠出年金を使って、標準報酬月額を下げれば、社会保険料を減らすことが出来ます。ただし、その分厚生年金の受給額など、社会保険料から受給できるお金も減ってしまいます。
確定拠出年金を利用する場合は、そのリスクも考慮した上で掛金を設定するべきです。
僕個人的には、厚生年金が減るとしても、目先の社会保険料を節税する価値はあると考えています。
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