漫画『最強伝説 黒沢』が哀しくも面白い!【書評・レビュー】

最強伝説 黒沢』という漫画をご存知でしょうか。

読み方はそのまま、”さいきょうでんせつ くろさわ”です。

こちらは『カイジ』『アカギ』で有名な福本伸行先生の作品で、『ビッグコミックオリジナル』で2003年から2006年まで連載されていました。既に完結しています。

福本伸行作品の中ではあまり有名ではありませんが、この漫画がとても面白いのです。

特に僕のような、独身・中年の男性には、良くも悪くもすごく刺さると思います…。

『最強伝説 黒沢』のあらすじ(ネタバレなし)

黒沢のプロフィール

『最強伝説 黒沢』の主人公「黒沢」は44歳の中年男性です。

独身・結婚歴なし・彼女なし。

大柄ですが、顔はお世辞にもカッコいいとは言えません。(作中では不細工・ 醜男扱い)

黒沢は穴平建設(あなひらけんせつ)という土木工事会社の現場監督として働いています。

高校を卒業してから26年間、毎日毎日ただ仕事をするだけの生活を送り、そこに何の疑問も抱いていませんでした。

穴平建設に出社する黒沢(「最強伝説 黒沢」1巻)

黒沢が望む物

しかし、ある日、黒沢は気付いてしまったのです。

自分の人生があまりに地味できらびやかでないという事実に…。

工事現場で作業する黒沢(「最強伝説 黒沢」1巻)
悩む黒沢(「最強伝説 黒沢」1巻)

黒沢が欲しいのは、自分自身の人生における幸せです。

テレビの中で、感動するスポーツや物語を見聞きしても、それは結局、他人事でしかありません。

ワールドカップで応援する黒沢(「最強伝説 黒沢」1巻)
「最強伝説 黒沢」1巻
「最強伝説 黒沢」1巻

自分自身の人生が輝いていないと、全く意味がないのです。

黒沢の現状

そういう意味で、今の黒沢はとても悲しい状況におかれています。

誕生日を同僚に祝ってもらうこともなく(誕生日ということに気付いてすらもらえない)、1人で白本屋という居酒屋でなんこつ揚げライス(ライスの上になんこつ揚げを乗せたもの)を食べていたりします。

誕生日になんこつ揚げライスを食べる黒沢(「最強伝説 黒沢」1巻)

黒沢が人生で得たものは、齢(とし)だけ。

ついでに”腹”と”しわ”ぐらい。

黒沢は自分自身を齢(よわい)を重ねただけの男、「齢男」(としお)だと自嘲します。

自分を齢男と自嘲する黒沢(「最強伝説 黒沢」1巻)

最近はカップルを見かけることには慣れましたが、子供連れの親子を見ると心が痛むという状況に…。

親子連れを羨む黒沢(「最強伝説 黒沢」1巻)
親子連れを羨む黒沢(「最強伝説 黒沢」1巻)

現状を嘆く黒沢ですが、出口を見出せません。

どうやったらこの現実、不安・焦燥から逃れられるかが、本気でわからないのです。

世の中には同じように苦しんでいる人達が、きっといるはずなのに!

不安感をどうして良いかわからず泣き叫ぶ黒沢(「最強伝説 黒沢」1巻)
「最強伝説 黒沢」1巻
不安感をどうして良いかわからず泣き叫ぶ黒沢(「最強伝説 黒沢」1巻)

悩みぬいた黒沢が考え、導き出した結論。

それは、人望が欲しい・・!

人望が欲しい・・!(「最強伝説 黒沢」1巻)

そう、人望です。

せめて仕事仲間だけには、自分のことを”善い人”だと分かって欲しいと思いました。

黒沢の行動

そこで黒沢は早速、人望を得られるように行動を開始します。

しかし黒沢の不器用さゆえ、ここで起こす行動がどれも押しつけがましく、的外れな内容になってしまうのです。

仕事中にビールを差し入れしたけれど飲んでもらえなかったり…(当たり前)

差し入れのビールを飲んでもらえずショックを受ける黒沢(「最強伝説 黒沢」1巻)

懐いていると思った後輩(浅井)に回らない寿司屋を奢ってやろうとしたら、帰ってゲームがしたいと泣かれたり…

浅井に帰りたいと泣かれてショックを受ける黒沢(「最強伝説 黒沢」1巻)

現場でお昼に食べる仕出し弁当に、アジフライを追加して騒動を起こしたり…

アジフライ追加弁当を思いつく黒沢(「最強伝説 黒沢」1巻)

不器用でちょっとズレている黒沢が起こす行動が、どれもこれも面白いのです。

また、黒沢は身体が大きく腕力があり、さらに行動力もあって常識外れの行動を取るが故に、喧嘩に巻き込まれることもよくあります。

44歳独身で自分のつまらない人生を憂慮している、そんな黒沢の日常・非日常を描いた漫画が、「最強伝説 黒沢なのです。

『最強伝説 黒沢』は何巻まで発売されている?

『最強伝説 黒沢』の単行本は、全11巻です。

最初に述べた通り、既に完結しています。

ただし、注意点として、「最強伝説 黒沢」には『新黒沢 最強伝説』という続編があります。

『新黒沢 最強伝説』は全21巻なので、最強伝説黒沢シリーズはトータル全32巻ということになります。

ついでに言うと、『最強伝説 黒沢』に登場するキャラクター「仲根秀平」を主人公としたスピンオフ、『最強伝説 仲根』(さいつよでんせつ なかね)という作品もあります。

こちらは”さいきょうでんせつ”ではなく”さいつよでんせつ”と読む点に注意です。

カイジ系作品(というか福本伸行先生)は、スピンオフの出し方が本当にうまい…。

『最強伝説 黒沢』の値段

『最強伝説 黒沢』は主に電子書籍で購入出来ますが、価格はAmazon Kindleだと1冊396円、楽天koboの場合は1冊440円です。

紙の本の価格は556円と設定されているようですが、新品はもう出回っていないようです。

中古で探すと全巻セットが1,000円~3,000円で購入可能です。


ただ、AmazonKindleの1冊396円というのも、最近の漫画にしてはかなり安いですよね。

全11巻を揃えても4,356円です。

5,000円以内で全て揃えられるので、電子書籍に抵抗がない方は、Kindleで購入することをおすすめします。

『最強伝説 黒沢』を無料で読む方法は?

『最強伝説 黒沢』を無料で読んでみたい方は、いくつかのサイトで試し読みが可能です。

僕がおすすめなのは、無料漫画サイト・アプリの「ピッコマです。

「ピッコマ」では『最強伝説 黒沢』が常時、3話分無料、また”待てば無料”(23時間ごとに1話読める仕組み)を使えば、第33話までタダで読むことが可能です。

33話というのは、単行本4巻までの内容なので、これが無料で読めるというのはすごいことです。

また、アマゾンプライム会員の方であれば、「Prime Reading」(プライムリーディング)で、『最強伝説 黒沢』の1巻を無料で読むことが出来ます。

まずはどんな内容なのか、実際に試し読みしてみたい方におすすめです。

まとめ

『最強伝説 黒沢』は、44歳の独身中年黒沢が、自分の人生があまりにもつまらないことに気付き、苦悩し、人望(と女)を得られるように行動する日常を描いた漫画です。

また、たまに喧嘩に巻き込まれて、非日常的なバトルを送るシーンもあります。

黒沢の不器用さが招く事件がとても面白いです。

そして、僕のように黒沢と同じような境遇に置かれている人、つまり人生に行き詰っている人間にとっては、黒沢の言葉がとても深く、心に刺さります。

上で紹介している黒沢の名言を改めてみてみましょう。

時々呆然とする。

生まれて44年…
働き始めて26年…

その間の人生が……
あまりに地味というか……
きらびやかでない事に、唖然とする。

いいのか…?
これで…?

それともこんなものなのか…?
おおむね他の連中の人生も…!

黒沢の名言①(『最強伝説 黒沢』)

オレの人生がもし…
平均的というか…
ごくまともに推移していたならば…

黒沢の名言②(『最強伝説 黒沢』)

この数多ある灯の下にいるのは…
幸せ者ばかりってわけじゃねぇだろ…!

(中略)

みんな………
どうしてるんだ…?

この胸苦しさ……
焦燥…
痛み…
腐敗…
喪失…
徒労…

つまり…

なにかとんでもない勘違いをしているんじゃないか…?
っていうこの不安感…

いいのか…?

こんな生き方で…!

分かんねぇ…!
オレには分かんねぇ…!

みんな……
本当にどうしてるんだ……?

う~ん、深い。

そして心が痛い…。

そしてわかりみがすごい!

人間誰しも、自分が主役でありたいものです。

でも、大抵の人は大人になったら気付くんですよね。

自分はこの世界の主人公ではない、ということに。

そして、自分の人生に妥協し、折り合いをつけて生きていかなければなりません。

ただそれがまた難しいのです。

特に黒沢や僕のように、いわゆる平均的な人生すら送ることが出来ていない人間にとっては…。

「オレの人生がもしごくまともに推移していたならば」
「なにかとんでもない勘違いをしているんじゃないか…?」

僕も結婚できないおっさん、齢男なので、黒沢の気持ちが痛いほどわかります。

僕のように黒沢と同じ境遇の人が読めば、感情移入して楽しく読めると思います。

逆に順風満帆な人生を送っている方は、「こんな悲しい人生を送っている人間が世の中にはいるんだな」と、新しい気付きが得られるでしょう。

『最強伝説 黒沢』はとてもおすすめです!

カイジやハンチョウが好きな方は、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか!

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